これが、苗村氏より初心者親子の天文同好会に贈られた苗村鏡です。(主鏡の下のほうが欠けたように見えますが、これは映り込みの影です。)主鏡直径157m 厚さ22mm、T.N.M.
872 斜鏡は、短径40mm T.M.P 336-3 です。斜鏡の裏には、
TMP
336-3
ナムラ
と書かれています。主鏡の裏には、
TNM872
FL900mm
苗村鏡開設アクセス7777記念
苗村
とのサインがあります。
望遠鏡製作のコンセプト
1. 子供にも楽に覗けるよう、接眼部をできるだけ低くすること。
2. 運送が容易なよう、できるだけコンパクトに収納出来ること。
3. これだけで自立するよう、架台も一緒に製作すること。
4. 組立が容易なこと。
望遠鏡案
鏡筒式とトラス式の2案があります。以下は、トラス式についてです。
1. ロッカーの材料は、9mm厚ベニヤ、トップは、3mmベニヤででトラス及び接眼取付部を5〜6mmに補強することを考えています。
2. 重心の位置の詳細な検討はまだですので、耳軸の位置は、変わる可能性があります。
3. 150mm
とドブソニアンとしては比較的小型軽量ですので、アイピースによって重心の位置が変わるのを無視できません。そこで、アイピースの反対側にスライド式のバランスウエイトの装着を考えています。
4. トラスドブですが、トラス棒は 15x10 アルミ角パイプを M6
ボルト止めします。
5. 主鏡セルは、3点式、バネを併用した押しネジとして、引きネジを締めなくても、調整できるようにします。引きネジは、運搬時の固定用です。押しネジには、ノブを付け手動調整が可能な構造とします。押しネジは、ピッチをある程度細かくしたいので、M5を予定。この構造では、調整ネジが、主鏡を突っつくおそれがありますので、そうならないよう、バネの中にスペーサーを入れるとともに長さを厳密に調整します。
6. 主鏡は、逆さにしても落ちないよう、運搬時の振動に耐えるようゴムなどを介して固定します。
7. 耳軸は、垂直から水平まで、少なくとも鉛直±45度は、接触するようにしました。耳軸受けは、鏡筒が軽いため脱落防止も兼ねて、深めにしました。
8. トップ形状は、上面に遮光絞(φ180)を設けて、暗箱効果で暗くしています。
9. トラスの長さは、500mm以下ですので、梱包時には、全てを内寸
350Dx400Wx500H の箱に収納できると思います。
10. 接眼部は、収納時に邪魔になるため、取り外し式にします。これも含め、全ての脱着は、ローレットネジや、ノブを使用し、工具が無くても組立が出来るようにします。
現在の案 試案5 以前の案は、こちら 試案1 試案2
試案3 試案4
結果的に、トラス式ドブを採用することにしました。
製作の進行状況
2001年4月3日
9mm厚ベニヤは、DIY店で、直線カットだけやってもらいました。メインボックスは、トリマーで溝を切ってはめ込んで組み、タイトボンドで接着しています。この状態で、かなりの強度が出ています。クギや木ネジのようにイヤイヤすることがありません。セル取り付け板(下)及び遮光板(上)は、ジグソーで穴を開けました。
セルは、台が10mm厚、鏡取り付け板が、5mm厚です。鏡を固定する金具などは、まだ製作しておりません。直線はジグソーで、丸穴は、回転キリで開けました。10mm厚はしんどかったです。押しネジの位置はドジりました。押しネジが蝶ネジに当たってしまいます。(^_^; 何をどうするかは検討中。蝶ネジのフィーリングがあまり良くないので、テフロンなどでワッシャーを作るか、ローレットネジを作ることも考えています。
2001年4月8日
セルに主鏡固定金具を取り付け、メインボックスを組み立てました。この固定金具が、なかなか寸法が合わずに何度か作り直し、製作に丸1日かかってしまいました。輸送を考えていますので、万が一逆さにしても外れないように、製作する必要がありますので、悩みました。セルの取り付け部には、鬼目ナットを使用し、精度が出るように工夫してあります。右上にあるのは、タイトボンドの容器です。これは従来の木材用接着剤の常識を覆すような、非常に強力な接着剤です。
今後、耳軸、トップリング、トラス棒、ロッカーと進んでいく予定です。
2001年5月1日 →
トップリングを組み立てています。接着剤で接着しただけなのですが、これで充分な強度が出ています。使用した接着剤は、タイトボンドで、楽器の製作などに使われるものです。木との馴染みも良く極めて強力で、おそらく無理に剥がしたら、接着面ではないところから剥がれてしまうでしょう。一応、念のため、数カ所に木ネジか、小クギを打っておくつもりです。
接眼部は、mimuさん寄付のボーグヘリコイド T です。
2001年5月5日
バランスを見るために仮組みしました。箱の中に主鏡をおいています。画像のようにアメリカンサイズアイピースを使用する状況でメインボックスのフチに来ました。スパイダー、副鏡、バランスウエイトは取り付けていません。当初のラフな計算では、2インチアイピースを付けて、この位置に来るはずでしたので、だいぶトップヘビーです。そのため、少々使い勝手が悪くなりますが、ファインダーをできるだけメインボックス側に寄せます。取り付けがトップリングのフチになるような位置です。
トラス棒は、まだ調整していませんが、余裕を見て切断し、設計より50mmほど長めになっています。この長めのトラス棒が、重心をトップ側にずらしています。トラス棒は、副鏡を取り付け、ピントを確認した後、調整します。最終的な調整は、ヘリコイドTに取り付ける2インチホルダーの長さで行います。トラス棒の取り付けは、オーソドックスにノブスター+オニメナットにしました。大型ドブと異なり、鏡筒事態が非常に軽いので、2本だけでもトップリングを支えることが出来ます。そのため、組立も一人で問題なく出来ます。
また、赤道儀での使用を可能とするため、アリミゾプレートも購入してきました。メインボックスに取り付ける予定です。
2001年5月6日
スパイダーの材質は、0.5x20mm焼入リボン(鋼)です。カナノコの刃と同じぐらい硬いので切断にとても時間がかかりました。使用した刃は、約半分の刃先が折れていました。摩耗も激しいですが、ひっかかった瞬間に、刃先が折れてしまいます。ヤスリも効きませんので、サンダー、タングステンカーバイドの刃、ダイヤモンドヤスリといった工具が必要です。タングステンカーバイドの刃は、良く切れますが、刃の切り幅が広く高価です。
鏡筒への取り付け用に M4
鉄ビスを銀ロー付けしています。斜鏡取付台座は、5.0t黄銅で製作し、ロー付けしました。ロー付けは、両接合面に予めローを回すというか、ハンダ付けのハンダメッキあるいは予備ハンダと同様に、ローをなじませておくことが、成功の秘訣です。これをきちっとやっておかないと、数回失敗したりして材料に酸化物が付いてくると、どうにもこうにもならなくなります。また、火力も充分な物を用意しておくことが必要で、今回は、手持ちのカセットボンベ用バーナーでは足りず、結局、ガスコンロの上に載せて、バーナーと併用して加熱しました。ステンレスのように熱伝導が悪いと、多少の火力不足はごまかせますが、銅やアルミのように熱伝導がよいと、部品全体を熱する火力が必要です。
斜鏡取付台座は黄銅で製作し、このスパイダーにロー付けしました。斜鏡のホルダーは、アルミ製です。御覧のように中心のボルトは、斜鏡側から入れています。
2001年7月8日
最終的なピント確認で、火星及び二重星を入れてみました。きちんと芯出ししたわけではないですが、非常にいいですね。星像が小さいので、こと座のダブルダブルは、80倍ぐらいで楽勝で分離してきます。中接近中の火星も輪郭がしっかりとしています。HF架台に危なっかしい乗せ方で確認していたので、ディテールの観測はしていません。
15cm
級ニュートンを操作してみて、大きさがちょうど良いことに驚かされました。20cm
を外に出すのは、ちょっとした決心がいりますが、そういう感覚が
10cm 並みとまでは行かないまでも苦ではないんです。 明るさでは、20cm
より暗く集光力の差を感じますが、解像度の差はあまり感じません。気軽に出せる望遠鏡という点では、ジャストサイズといえるかもしれません。
工作のほうは、木は全て切り出しました。
2001年7月15日
粗々なバランス調整をしまして、再び解体し、木製部分を塗装しています。内側は、艶消し黒ラッカー仕上げにしました。黒板塗料も考えましたが、ドブは、内側の金具の取り外しを行うため、耐久性の良い艶消し塗料にしました。
外側は、チーク色ウレタン塗料です。画像は、数回塗り重ねて、最終段階のクリヤー塗装にかかっているところです。私個人としては、クリヤーを塗り重ねてアメ色にするのが好みなのですが、今回は強度重視で接合面に塗りこんだ接着剤を隠す意味もあり、有色塗料を使用しました。
2001年7月20日
トラスの末端処理や、トラスカバー、主鏡裏などの遮光などが残っていますが、一応の完成です。耳軸の形状や、重心位置に合わせた若干の位置調整などを行いましたが、ほぼ設計図通りです。重心は、ナグラー9mmなど、アメリカンサイズの重めのアイピースでバランスが撮れる位置にしてあります。上下方向が少し軽いので、フエルトなどでフリクションを付けた方が良さそうです。
トップリングの中です。斜鏡の取り付けを貼りつけにするか、ホルダーを作るか悩みましたが、脱落の危険性が少ないホルダー方式としました。実は、この選択で1ヶ月ほど悩み、手が止まってしまったのでした。ヘリコイドTは、端面3ヶ所にタップをたてて、裏面から視野絞りを兼ねた厚さ2mmのアルミ板を当てて止めています。
収納の状態、これで全てです。重さは、約11kg。非常にコンパクトになりました。トラス棒は、上部のリンクが外れないようにボルトをCリングで止めてあります。
栃本での星像確認
あまり天候が良くなくて、観望してしばらくすると薄雲がかかってきてしばしの休憩という状態を一晩中繰り返しました。
星像は小さくシャープ。火星なども、シンチレーションの影響を受けにくい口径のためか、意外によく見えます。M13
は、薄雲越しながら、星に分解していました。ディープスカイは、30cm越のドブソニアンが乱立する飯能天文同好会の観望会では口径による光量不足が否めませんが、15cm最小の望遠鏡として、手軽さが充分にあります。
周囲の望遠鏡と比較して非常に小さいことがおわかり頂けるでしょうか。子供が覗くには、無理のない高さですが大人が覗くには、背の低い椅子など工夫が必要です。大人向けの観望の際は、三脚に固定することも検討した方がよいでしょう。
トラスカバーを作りました。できるだけ目立たせるためにカラフルな星の布地を使い、ホックどめにしました。
2001年7月28日 星をもとめて においてファーストライト
名称は、Starry Box 2001
に決定しました。雲が取りきれないあいにくの天気でしたが、火星や月を参加者に見ていただきました。細かい部分を修正し、取扱説明書及び光軸調整治具を添付した後は、会員を初め、多くの星まつりで見ていただけるよう貸し出させていただきたいと思います。
このプロジェクトは、多くの方々のアドバイスと以下の方の寄付(部品、お金)によって遂行します。誤りなどありましたらお知らせ下さい。
mimu さん、
池田の星仙人さん、、宮崎さん、まっくさん、ういんどみるさん、なべちゃん、SPEE
さん、ひで〜さん、わかばさん、エッチャン、ちゃっきりさん、タックさん、いそたさん、かずはんさん、ハチベーさん、バボちゃん、UNICO
さん、まきさん、じろーさん、しんどうさん、maru
さん、ふるやさん、イカデビルさん、ssato
資材提供リスト
Quik Finder
カサイトレーディングの等倍ファインダー by じろーさん
摺動材 ドブ架台の摺動面に貼り付けるものです。 by ハチベーさん、バボちゃん
ヘリコイドT by mimuさん
8x50 ファインダー + 脚 by いそたさん
ウエイト、テフロンテープ ひで〜さん